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現在AMRを検討中のご担当者様で実際の導入の状況や進め方などのイメージなどが具体的に持てずに悩んでいらっしゃる方はおりませんか?
今回のレポートを通して、AMRを導入する物流現場でどのような課題やニーズがあり、当社の技術が課題の解消に繋げられたのか、実務面での調整や課題の発見などがどのように進められたのか、と言った他社の事例をご参考頂く機会にして頂ければと思います。
今回AMRを導入頂いた株式会社STOCKCREW様(以下STOCKCREW様と記載)ですが、中小企業や個人事業主、大企業のスタートアッププロジェクトが必要とするEC物流機能を提供しており、利用のし易さとコストパフォーマンスに優れたサービスが好評で、契約社数は2022年6月現在250社を数えております。
日々の出荷件数は平均1,000件、出荷方法はリストピッキング+目視検品に頼っており、導入社数の拡大と共に日々増える商品取扱数と誤ピッキングの解消に課題を感じておられました。今回STOCKCREW様には当社からFlex Comet 6台とFlex Swift 4台を提供し、新規容器の設計など当社の試験取組にもご協力頂きました。
STOCKCREW様との導入プロジェクトは22年3月からスタートしました。プロジェクトを進める中ではAMRと実作業にいくつもの課題がありました。これから解消しなくてはならない課題もありますが、まずは以下の課題の解消から進めることに致しました。
①リストピッキング+目視検品による誤ピッキング、誤出荷の発生
②納品書+送状の先出しによる送状取り違え
③ピッキングした商品の容器サイズ超過
これらの課題には課題毎に荷主固有の背景などがあり、そうした背景と合わせてAMR導入に至っている経緯を記載したいと思います。現在導入を検討されていらっしゃるご担当者様にとってこうした情報が助けになれば幸いです。
まずはピッキング方法についてです。リストピッキングが採用されており、1荷主毎に出力されるピッキングリストに送状、納品書といった専用帳票をピッキング担当スタッフが持ち、ピッキングを開始します。STOCKCREW様の課題としては以下の通りです。
これらの2項目はSTOCKCREW様で取り扱う全ての荷主様に当てはまるものではありませんが、商品現物の情報(バーコード情報)を揃えることと、ピッキングを行う場合の商品コードを統一させる点が大きなハードルとなりました。まず1点目のバーコードラベルの問題についてはSTOCKCREW様でラベル貼り作業を実施頂きました。時間は掛かりましたが、バーコードラベルによる検品を可能にしました。やはりAMRに限らず、何かしらシステム処理やロボットでのデータ処理を視野に入れると、このような利用前提条件の整備は必須です。
2点目に商品コードについてはAMRの設定として1SKUにつき複数種の商品コードを登録が可能な設定がAMRには備わっており、今回は両方の商品コードをどちらも物流現場で使用可能にする設定を施しました。またJANコードだけでなく、アルファベットによる商品コードもCODE-39/CODE128といったバーコード情報に置き換えるため、こうしたJAN以外の商品コードでも実用に耐え得ることを示せた点が大きいです。
この2点によりSTOCKCREW様ではピッキング時の検品で目視では照合しづらい商品もバーコードによる検品・検数を行うことで業務の負荷低減と誤ピッキングの防止を両立させることが可能になりました。また、目に見えない効果として誤ピッキングがなくなったことで、以前であれば発生していた誤ピッキングした商品の在庫戻しが減らせたことや誤ピッキングがなくなったことにより在庫精度もあがったこともメリットとして挙げられます。
さてAMRによるピッキングが可能になったとして、最終的な検品・梱包ラインで誤った作業を行なってしまえば、ピッキングの効率も無かったことになってしまいます。STOCKCREW様では、現状ピッキングリストと同タイミングで納品書や送状を先行出力しております。
当社AMRではロボットへ出荷指示を出す方法としてアルゴリズムを計算する当社のシステムによって機械的に並び替える自動受信方式と今般新たに開発した作業者起点で指定タスクを紐付けるピッキングリスト読込形式の両方を選択することができます。
STOCKCREW様でも従来の自動受信方式だとどうしても先行出力した帳票との付け合わせが複雑で、今回このピッキングリスト読込機能の開発によってロボットへ出荷指示を紐づける際に、納品書の読み込み、指定間口への投入を行うことで先行した納品書と送状の順番を並び替えることなくロボットに出荷指示を出すことが可能になったのです。結果として送状や納品書の取り違えリスクを減らせるだけでなく、出荷指示を紐づける作業者の判断でロボットへのタスクの受け渡し順を調整するなど業務計画立案・修正にも大きく貢献しております。なお、現在STOCKCREW様はロボットオペレーション用に納品書と送状を検品エリアから直接出力する仕組みを構築中です。この仕組みの構築が完了すると出荷指示紐付け工程での時間短縮や検品単位での納品書・送状出力が可能になる、現状使用している帳票の一部が不要になるなど、更なる出荷精度や生産性の向上が見込まれます。
最後の課題はAMRに搭載する容器についてです。こちらも当初は当社が持つ標準6間口容器(2間口/1段 x 3段)を使用しておりましたが、STOCKCREW様の保管される様々な商品の形状を満たせず、ピッキングした商品が容器間口サイズを超過するといったことが起きました。そこでFlex Swiftという機体に合わせられる容器に新規設計に至りました。
新たな容器は最大8間口(2間口/1段 x 4段)を利用可能です。1間口のサイズが330mm x 200mm x 100mmと従来の標準6間口容器よりも拡張した設計を採用しました。これによりこれまでであれば容器サイズを超過していた物量も収容可能になり、また1タスクに紐づけられるオーダーも最大8件まで対応できることから8件分のオーダーのマルチピッキングを処理できるようになったことなど、AMRの対応範囲が格段に広がるなど、今回の容器設計は今のところSTOCKCREW様のオペレーションに適合を見せております。荷主要因や季節要因によって取扱商品の変更などAMRが運用可能な前提条件の変化も物流業界の特色でもあるため、当社では今後もより標準化された容器の設計を通じてAMRの柔軟な運用を可能にする施策を打って参りたいと考えております。
今回STOCKCREW様との取り組みで特段大きな課題として3つの課題を取り上げましたがこの導入プロジェクトを通じて皆様に最もお伝えしたいことがあります。当社のAMRは現行倉庫レイアウトに柔軟に対応できるようハードウェア、ソフトウェアの両面で設計されておりますが、実際の物流現場で発生している業務手順や運営ルールとの間でどうしても調整が発生する可能性があり、その点で必ずしも万能のソリューションとはなっていないということです。
しかしながら今回の事例にあるように、現場と共に倉庫業務の改善活動を通じて生産性の向上だけでなく、今後も新機能を随時実装できるロボットと改善業務との親和性も高いことからAMRを使ったオペレーションの新しい在り方へと発展させる可能性を秘めていると考えており、皆様に納得頂けるようお客様との伴走を続けながら、プロダクトやサービスも磨いてまいります。
なお当社では初期投資を抑えながらAMRをご利用いただけるRaaSモデルを提供しております。またお客様の業務要件などを確認させて頂いた後に物流現場との相性や使用感を気軽に感じて頂ける実証実験を数日間で行うプランを用意するだけでなく、デモ環境をご視察頂ける当社の越中島ラボや導入企業様と提携してAMR導入現場においての見学会なども企画して参ります。ご興味を頂きましたらお気軽にお問合せください!