導入場所:四国拠点
倉庫広さ:1,000㎡
課題:深刻な人手不足によるオペレーションや生産性の担保が困難
四国地方に拠点を持つ製品雑貨メーカー様のピッキング現場は、1,000㎡のスペースに60名の作業者が配置され、毎日4万ピースの処理が求められていました。
しかし、深刻な人手不足と限られた作業スペースにより、台車と作業者が密集する状況が常態化し、生産性の維持は非常に困難でした。繁忙期には最大で90名体制にしても出荷遅延が発生し、派遣会社からの追加人員の確保も難しい状況が続いていました。
このような三重の制約の中で、効率的な作業体制の確立は大きな課題となっていました。
多くのロボットメーカーから「不可能」と言われた自動化条件に対し、シリウスジャパンは既成概念にとらわれず挑戦を決意しました。
現場の高密度オペレーションや限られたスペース、膨大な処理量という複雑な課題に対し、「これは手術と同じ。成功するまでコストは請求しない」という覚悟を掲げ、取り組みをスタート。2022年に開催された物流総合展での出会いをきっかけにプロジェクトが本格始動しました。
これにより、従来の常識では実現困難とされていた現場の完全自動化への挑戦が現実のものとなり、シリウスジャパンの技術力と現場へのコミットメントが試される重要な一歩となりました。
小規模検証を経た上で、現場のオペレーションを全面的にAMRへ置き換えるフルスケールの実証プロジェクトを実施しました。
1,500㎡の現場に60台のAMRを展開し、中国本社からアルゴリズムチームを派遣、夜通しのテストと調整を繰り返しながら、現場の実運用に耐えうるシステムの完成を目指しました。
テスト中には、単なる稼働確認にとどまらず、高密度環境での効率的な走行ルールや衝突回避の最適化を行う必要がありました。その結果、現場の動きを仮想的に再現する「ゴーストモード」と呼ばれる無人シミュレーション機能を独自に開発。ゴーストモードを活用することで、実際の運用に先立ってAMR同士の動作や走行ルートをシミュレーションし、最適な走行ルールを確立することが可能となりました。
この取り組みにより、限られた空間での高密度なAMR運用でも、効率性と安全性を両立させることができ、全面的なオペレーション置き換えの実現に向けた確かな手応えを得ることができました。
現場の生産性向上と業務効率化に向けた、技術的にも運用面でも先進的な挑戦となったプロジェクトです。
①作業者数が60人 → 30人に
②1日あたり生産量が4万ピース → 5万ピースに
③作業者1人あたり生産性が95ピース/h → 238ピース/h(2.5倍)に
2023年8月、当プロジェクトは本格稼働を開始しました。従来60人で対応していた作業は、フルAMR運用の導入により30人へと半減しながらも、1日あたりの生産量は従来の4万ピースから5万ピースへと大幅に向上しました。
これにより、作業者1人あたりの生産性は従来の95ピース/時から238ピース/時へと約2.5倍に増加し、効率性の飛躍的向上を実現しました。また、AMR導入によって作業負担が軽減されると同時に、業務の属人性も排除され、誰でも標準化された手順で作業を進められる環境が整いました。
加えて、繁忙期における人員配置の柔軟性も向上し、現場全体の運営効率が大きく改善されました。生産性の向上に加え、作業者の負担軽減や柔軟な運用が可能となったことで、現場の働き方そのものにも大きな変革をもたらす結果となりました。
今回の取り組みは、効率性と安全性を両立しつつ、人に依存しない安定した物流オペレーションを構築した好例と言えます。
シリウスAMRは、1年半のリース運用を経て買い切りへ移行し、さらに別エリアへの追加導入も決定しました。単にAMRを提供するだけにとどまらず、現場に深く入り込み、顧客と共に未来の物流を創るパートナーとして選ばれています。
現場では、導入効果が具体的に実感されています。「重たい台車を押す必要がなくなり、身体が楽になった」「ロボットが仕事のパートナーになった」といった声が多く寄せられ、作業者の負担軽減と作業効率向上の両立が評価されています。特に繁忙期でも誰でも即戦力として働ける環境が整ったことで、業務の波動吸収が容易になり、従来の人手不足や作業負荷の課題を大きく改善しました。
さらに、スタッフとロボットの関係性も変化しています。最初は大きなロボットに戸惑いを見せていたスタッフも、安全性と操作性を理解し、慣れていく中でロボットを信頼し、自分の仕事のパートナーとして大切に扱うようになりました。
一日の終わりにロボットが整然と待機場所に戻る光景は、その愛着と信頼の証です。
こうした現場での成果と信頼関係が評価され、シリウスジャパンは単なる自動化機器の提供者ではなく、顧客と共に未来の物流を創造するパートナーとして、継続的な導入・拡張が進んでいます。
「LOGISTIC TODAY」では、当社代表取締役社長 二エユハン(グレース)による本導入事例のインタビュー記事が公開されてますので、ぜひご覧ください。